【元公務員の体験談】公務員から民間企業への転職は後悔する?
私は地方公務員から民間企業への転職経験者です。公務員から民間企業へ転職する際「どうして辞めちゃったの?」とか「もったいない」といったことを言われていたのを今でもよく覚えています。
世間一般のイメージが原因なのか、「公務員から民間企業に転職すると後悔してしまうのでは?」と思う人も多いと思います。転職を周りから反対されるとますます転職をためらってしまいますよね。
でも、転職を考えているということは公務員としての働き方に何かしらの悩みを抱えているからだと思います(もっと年収を上げたいとか、仕事が激務すぎるとか…)。
元地方公務員からのアドバイスですが、公務員としての働き方に悩みがあるなら、早めに転職を視野に入れた方が良いです(迷っている時間がもったいないくらいです)。
周りの意見はあまり鵜呑みにする必要はありません。というか公務員を辞めると言うと、周りの賛同なんて得られないと思います(世間の公務員に対する「安定」のイメージが原因で…)。
もちろん、転職をして後悔する人がいることも事実です。なので、公務員からの転職を考えているのであれば、どのような場合に後悔するのかを事前に理解しておくことがとても重要です。
本記事では、私の経験談、公務員からの転職で後悔する主な要因、後悔しない転職にするためのポイントや、おすすめの転職先について紹介します。
【最初に】周りの意見を鵜呑みにしてはいけない
先ほどもお伝えしましたが公務員に対する世間のイメージは良いため、そのことが原因で余計に公務員からの転職をためらってしまう人は多いです。
私の転職活動時は「せっかく公務員試験に合格したのに…」とか「民間企業の方が絶対大変」とか「民間企業は向いてない」など、いろいろ言われました。両親からは特に反対されましたね。
でも、やはり転職をあきらめることはできませんでした。結局、自分が転職してみて実際に後悔するか確かめるまでは、「後悔するかどうか」なんて分からないと思い、転職に踏み切りました。
転職後、「転職して後悔したのか?」については、そんなことはなく、転職をして本当に良かったと思っています。もし、周りの意見を鵜呑みにして、今も公務員のまま働いていたかと思うと、ゾットするくらいです。
もちろん、転職してみると確かに全然違う世界で、「すべてが思っていた通り」なんてことはありませんが、大変さでいえば公務員時代の方が大変だったし、労働環境は公務員時代はかなり劣悪だったと思います。
私の公務員時代の経験をまとめた記事もありますので、良ければ参考にしてください。
公務員からの転職で後悔する原因
世間のイメージどおり公務員にはメリットがあります。なので、公務員から転職するということはそのメリットを少なからず手放すことを意味します。
後悔する方の多くは、この点をしっかり理解しないまま転職に踏み切ってしまっている可能性が高いです。
そこで後悔する人がどのような理由で後悔するのか、原因をお伝えします。
公務員の安定性を失い後悔する
公務員の安定性は民間企業よりも高いため、公務員を辞めると、この安定性を手放すことになります。
・定年までの雇用が保障されており、給与も一定水準で維持されます(よほど問題を起こし懲戒処分されなければ)。今の制度のままであれば、年齢とともに少しずつ年収はあがっていくでしょう。
・組織の運営が景気の変動に左右されないため、倒産のリスクはほとんどなく、リストラになる心配がありません。
公務員は(よほどの事情がない限り)雇用が法律で保障されているため、その意味で安定していると言われるということです。
この安定性を重視する方は公務員を辞めると後悔するかもしれません。ただし、転職先によっては高い福利厚生が整備されており、公務員に近い水準で就業できる場所もあるためそこは抑えておきましょう。
働き方の違いについていけず後悔する
私は公務員の大変さもよく理解しているつもりですが、民間企業には公務員にはない大変さもやっぱりあります。
民間企業は利益を出し続けないと継続して活動することができません。なので、従業員は少なからず「コスト意識」や「成果」というものを常に念頭に置いて働いています。
当然、この意識があるかないかでキャリアアップのしかたも変わります。もちろん、個人の成果が見えにくい事務職等のバッグオフィスの仕事もありますが、民間企業は市場で他のライバル企業との競争に勝つ必要があるという組織の構造上、このピリピリ感は避けては通れないと思います。
公務員は民間市場の枠外にいるため、市場で競争をするわけではありません。一方で民間企業の場合は、競合他社に勝たないと、会社の業績が悪くなり、最悪の場合は倒産してしまうリスクがあるわけです。
なので、公務員の時の感覚のまま民間企業に行くと、働き方の違いに面をくらってついていけずに後悔する人もいます。
年収が低下して後悔する
おそらく、給料などの待遇面で後悔するのは、30代以降で公務員から転職をする方の場合がほとんどだと思います。
公務員の給料は確かに安定はしていますが、若手のうちは本当に少ないです。私もよく民間企業に行った学生時代の同期数人と待遇面で情報共有していましたが、決して公務員の給料が恵まれているとは思いませんでした。
でも、公務員の場合は30代から40代にかけてほとんど確実に昇給するので、これくらいのタイミングで待遇の良さを実感してくるのかと思います(私は20代のうちに転職してしまいましたが…)。そのため30代以降は、転職をすると、年収が下がるケースも珍しくはありません。
若いうちに転職する場合は関係ないかもしれませんが、30代以降で転職を考えている場合、待遇面で後悔する可能性は十分あるということです。
公務員の仕事の方がやりがいを喪失して後悔する
転職した結果、公務員時代に感じていたやりがいを喪失して、後悔するケースもあります。
人によって何にやりがいを感じるかは様々です。個人的な感覚ですが、やはり「規模が大きい仕事」や「国民や市民に寄り添う仕事」にやりがいを感じるのであれば、公務員のままでもいいかもしれません。
もちろん、「規模が大きい仕事」や「国民や市民に寄り添う仕事」は民間企業でもできるので、結局のところ、「自分にとってベストな転職先を選ぶことができるかどうか?」で、やりがいを喪失するかどうかは変わってきます。
なので、「公務員をやめたから」ではなく「転職先選びを失敗したから」から後悔するという方は、これの場合は適切なような気がしますね。
公務員からの転職で後悔しないために大切なポイント
公務員のままでは改善できない悩みを再確認する
公務員からの転職に関わらず、転職をする際は「転職以外の方法によって抱えている悩みが改善できないか?」を考えることが重要です。
人間関係に支障があって転職を考えている場合、転職してもまた同じように人間関係が合わない可能性がありますよね。人間関係を改善させるだけなら、人事に交渉して別の部署に異動させてもらったりすることで改善できるかもしれません。
転職は大きな決断なので、基本的には悩みを改善できないときの最後の選択肢にしましょう。
私の公務員時の最大の悩みは、「専門的に仕事ができない」というものでした。
私が勤めていた地方公務員の行政職は、約3年おきに異なる分野を扱う部署への異動を繰り返すため、一度学んだことを長期的に活かしてキャリアアップすることが難しいです。地方公務員の部署異動は、未経験業界への転職のようなものであり、異動前の知識がほぼ役に立たないというのが普通です。
一方で、現職の経理職は、法律や会計基準を熟知して専門的な知見から他の部門をサポートする仕事であり、業務を通じて得た知識や経験は他部門のさらなるサポートにつながます。さらには別の企業でも役に立つスキルを手に入れるため、知識や経験が無駄にならないのです。
このような専門性は、公務員では決して身につくことはないと判断し転職を決意しました。そして結果的にその判断は正しかったと転職後の今でも断言できます。
事前に転職先の環境と文化を理解する
いくら自己分析ができて、自分に向いている仕事が分かったとしても、職場の環境や文化が合わなかったら、転職したことを後悔する可能性があります。そのため、事前に転職先の環境や文化を調査しておく必要があります。
しかし、多くの人にとって、転職先に知り合いがいるわけでもないため、この調査は決して簡単なものではないでしょう。面接時の逆質問でも聞くという方法もありますが、聞きにくい内容もあるでしょうし、何しろ面接でそんな余裕もないでしょう。
そこでわたしが個人的におすすめするのは、転職の口コミサイトを利用することです。口コミサイトには、企業の文化や体質、今後の将来性についてどう思うか、社員の士気はどうかといった、会社に対する従業員の生の意見が掲載されています。
口コミサイトの例
- OpenWork
- ライトハウス
- 転職会議
- キャリアコネクト
基本的に口コミサイトは、退職を検討している人が書くような仕組みになっているため、会社に対してシビアな意見が目立つかもしれません。
しかし、口コミサイトを見ることで、多くの会社を比べることができるという大きなメリットがあります。今の公務員の官公庁と転職を検討している会社の口コミを見比べることで、「今よりはましになるかな」といった感覚をつかむこともできます。
わたしもOpenWorkを使っていましたが、業種や職種別にしぼってランキングをみたりすることもできるので、転職活動時はかなり重宝しました。
労働条件の比較検討
労働条件はなんだかんだ一番大事です。
公務員から民間企業への転職では給与や福利厚生面の変化も重要な要素です。公務員と比較して収入や労働条件がどう変わるのかを検討しましょう。
公務員から民間企業への転職は必ず未経験転職になります。そのため、わたしは転職活動時、年収等の労働条件は多少悪くなるのは仕方ないという覚悟でいました。
しかし、結果的に労働条件も改善され、生活全体が本当に楽になりました。労働条件が転職理由ではなかったとしても、可能な限り良い条件で採用してもらうに越したことはありません。
労働条件は企業の採用ページ、転職サイトやエージェントからおすすめ求人などに載っています。もちろん、面接を通じて良くなったり悪くなったりすることもあるので、最終的には内定通知書の労働条件を確認する必要があります。
転職は大変であるということを当たり前の認識として持つ
これはどちらかというと考え方の問題です。
転職は新たな挑戦であり、適応力や柔軟性が求められます。これは転職活動時だけの話ではなく、転職先への入社直後も当てはまるでしょう。
人間なので、変化に対する恐怖心というものを誰しも必ず持っています。新しい環境での変化やチャレンジは、短期的には大変だと感じるでしょう。そのため、「少しでも簡単に転職できそうな会社」という基準で転職先を選んでしまうことになりかねません。
しかし、このような基準で転職先を選んでしまうと、今よりも悩みが深くなって、転職を後悔することになってしまいます。
現状の仕事に対する悩みが改善されなければ、転職をする意味がありません。
転職は短期的には大変ですが、長期的にはかけがえのない経験になります。
公務員からの転職でおすすめの業種・職種
ここまで、公務員からの転職で後悔しないために大切なポイントを説明してきました。
後悔しない転職のためには、公務員の経験や業務を通して身についた能力を活かせる仕事を選ぶことも重要になります。
ここでは、公務員から転職する際に、実際に公務員の経験が活かせるかどうかという視点で、おすすめの業界や職種を紹介します。
公務員の経験といっても、今担当している仕事によって活かせる能力は変わってくるためいくつか紹介します。今の自身の仕事に近いと思うものに当てはめてみてください。
市民対応の経験が多い人→営業やカウンセラー
窓口業務や市民対応の経験がある方は、営業職やカウンセラーといった職種で、高いコミュニケーション能力や人間関係構築のスキルが活かせるため、新たな職場での顧客対応やクライアントサービスに貢献できます。
基本的に、自治体や省庁の行政職経験者は、多くの関係機関の調整業務が多いので、コミュニケーション能力はかなり鍛えられています。そのため、市民対応以外でも多くの人と一緒に仕事をしていた人もこれらの職種で公務員の経験が活かせると思います。
法律を運用する仕事をしている人→企業の法務や経理
法律を運用する仕事をしている人は、企業の法務や経理などがおすすめです。法務や経理といった間接部門は、法律等のルールに従って業務を進めるため、その意味では公務員の業務に近いという特徴があります。ただし専門知識が必要になるため、しっかり知識をつけていく必要があります。
ちなみにわたしは公務員時代にがっつり法律を運用して様々な調整業務を行っていたため、法律の基本構成や読み方、解釈方法等はある程度理解していました。そして、経理職へ転職しましたが、会社法、会計基準、各種税法、電子帳簿保存法等、かなり多くの法律を扱うため、公務員時代の経験がかなり役に立っています。
労働基準監督署で働いている人→企業の労務や法務
労働基準監督署での勤務経験を持つ公務員の方々は、企業の労務や法務部門で役立つことがあります。労働法や労務管理に関する知識や経験を活かし、企業内の労務問題の解決や法的なアドバイスを提供することができます。
教師→教育関係の会社
公務員として教師をしていた方々は、教育関係の会社での職務が適しているかもしれません。教育コンサルタントや教材開発、研修講師などの仕事を通じて、教育分野での専門知識や経験を生かすことができます。
警察官→警備会社、自動車学校の教官
警察官としての経験を持つ方々は、警備会社や自動車学校の教官などの職務に適している場合があります。セキュリティ管理や安全教育のスキルを活かし、新たな職場での安全管理や指導に貢献できます。
自衛官→インストラクター、ジムトレーナー
自衛官としての経験を持つ方々は、インストラクターやジムトレーナーなどの健康・フィットネス関連の職種に向いているかもしれません。身体のトレーニングや指導のスキルを活かし、健康促進やフィットネス指導に従事することができます。
消防士→ドライバー、ジムトレーナー、事務職
消防士としての経験を持つ方々は、ドライバーやジムトレーナー、事務職などの職務に適している場合があります。運転技術や安全管理のスキルを活かし、新たな職場での業務に貢献できます。
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