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市役所や県庁の部署異動のきつさをなめてはいけない件
市役所や県庁の部署異動は別業界への未経験転職のようなもの
私は元県庁の職員で、今は民間企業で働いているサラリーマンです。
この記事をご覧になっている方は、市役所や県庁への就職を考えいる方でしょうか。それとも、今実際に働いている方でしょうか?
すでにご存じの方もいるかと思いますが、市役所や県庁には部署異動が約3年おきにあります。そして、この部署異動が個人的にはかなりきつかったです。
私が転職をした理由の大部分は頻繁な部署異動です。
本記事では、地方自治体職員なら必ず経験する部署異動のきつさについて説明します。
目次
市役所や県庁の部署異動は未経験業界への転職のようなもの
みなさんは、地方自治体の仕事をイメージできますか?
例えば市役所とかだと窓口業務のイメージ強いですよね。私が働いていた県庁も市役所ほどではありませんが、県民の対応をする窓口業務はありました。
しかし、そのようなイメージ上の仕事は、地方自治体の仕事としては氷山の一角です。
地方自治体の仕事は本当に幅広く、私も実際に就職するまでは予想もしなかった仕事がたくさんありました。私が働いていた県庁の仕事で、パット思いついたものを下にあげてみました。
県庁の業務分野
- 観光(旅行支援、広報、首都圏へのPR など)
- 環境(絶滅危惧種、自然公園、水道、環境アセスメント、鳥インフル など)
- 災害対応(地震、消防、北朝鮮ミサイル など)
- 健康福祉(感染症対策、障がい者自立支援、地域医療、麻薬取締)
- 土木(河川、都市計画、道路 など)
- 商工(経営支援、就職支援、産業保護 など)
- 農林(農業、林業、水産業 など)
- 総務(人事、財政、法務、人権 など)
- その他(スポーツ振興、男女共同参画、教育、企画 など)
すべて書けばキリがありませんが、分野の幅広さが本当にえげつないですよね。民間企業は会社が一つの業界に属することになりますが、地方自治体は、言ってみれば同じ組織にいろんな業界が集まっているようなイメージです。
なので地方自治体の部署異動は未経験業界への転職と表現するのが、元県庁職員の個人的な感覚としてはしっくりくるわけです。未経験転職を短いスパンで繰り返すことをイメージしてもらえればいいと思います。
ちなみに...
同じ部署の中で全然違う内容の業務の担当に変わることもあります。例えば、契約調整担当が、急に庶務担当になり、支払い処理をする担当に変わるみたいなケースです。民間企業で例えると、営業から経理みたいなイメージです。同じ部署にいる間ですら、やることが結構変わります。自治体職員は公務員人生で1回だけしかやらない業務もザラにあります。
市役所や県庁の部署異動できついと感じること
元県庁職員の私の転職の大きな理由となった頻繁な部署異動できついと感じたことを紹介します。
部署異動できついと感じること
- 部署異動の度に分からないことだらけ
- 現場がイメージしずらい中での調整業務が大変
- 「自治体の職員なんだから知ってて当然だ!」と県民に思われているが、実際はそうではないこと
- 発言に自信を持てない
- 真面目に勉強したところで給料が増えるわけではない
1. 部署異動の度に分からないことだらけ
異動前の知識は次の部署では使い物にならない場合が多く、約3年おきにゼロからの勉強する必要にせまられます。
部署異動の頻度は多少変動はりますが、ベースは3年に1度です。業務には専門的な内容もあり、異動直後の1年間は、何をしているか理解しないまま業務をすることになります。
前任が同じ部署にいれば教えてもらうこともできますが、入れ替わりで別の部署になってしまうことが大半です。前任によっては、資料をしっかり残してくれていなかったりするので、それで大変な思いをすることも多々あります。
ちなみに...
直属の上司も異動してきたばかりということも珍しくないため、上司が部下の担当業務のについてしっかり理解しているという保証は全くありません。自治体あるあるなのですが、隣に座っている人が普段やってることが全然分からないなんてこともあります。
他にも、ある団体が自治体に要望書を出してくることもありますが、それが異動してきて間もないときとかだと、何を要望しているのかよく分かりません。私も経験がありますが、異動直後に要望書が出されても何のこっちゃってなります。前任もいないため、自分で過去の資料を遡って、経緯からすべて残業しながら確認していたのをよく覚えています。
2. 現場がイメージしずらい中での調整業務が大変
これはどのような仕事でも当てはまると思いますが、イメージが湧かないと、仕事がやりにくいですよね。部署異動が多いと、このイメージが湧かないという状態を何度も繰り返すことになります。
自治体の職員は、現場で実際に作業することは少ないにも関わらず、間に立って調整をするような仕事が多いです。
例えば...
県の事業方針を作るために、専門家の意見が必要になる際、専門家に関連資料を出す必要があります。その資料の作成に現場調査が必要になった場合、職員自らが調査するわけではありません。どこかの会社に委託して調査することが圧倒的に多いです。
この調査結果を調査業者からの書類や聞き取りだけで受けとり、それを専門家に説明するといったような仕事です。
実際に現場で調査した調査業者から専門家に直接説明というわかにもいかないので、当然、県の職員が間に入って説明する必要があるのですが、部署異動の直後とかだと、「知ったかぶりか」って自分で突っ込みたくなる程、よく分からないまま説明させられていました。
3. 「自治体の職員なんだから知ってて当然だ!」と県民に思われているが、実際はそうではないこと
「地方自治体の職員だから知ってて当然だ」という感覚でコミュニケーションをとってくる人も結構いますね。
市民からの問い合わせに納得のいく回答ができなければ、クレームにつながってしまうのはイメージしやすいのではないでしょうか。
でも、何も知らない状況に置かれているのに、納得のいく説明なんてできるはずもありませんよね。
部署異動が多いと、異動の度にこのような状況に陥るため、異動後の1~2か月は特に大きいストレスの中で仕事をしている人も多いです。
4. 発言に自信を持てない
これは実際に自治体職員を経験してみないとイメージしずらいかもしれません。
自治体職員は上司や市民、その他あらゆる人へ説明をする仕事が多いです。しかし、自分の発言になかなか自信を持てないというものがあります。
基本的に、何事も長い時間をかけて勉強したり経験するうちに自信というものは生まれてきますよね。しかし、自信を持って誰かに説明できるようになった頃には、次の部署に異動になってしまいます。
自分の発言が正しくても、その発言に自信が持てない間は、本当に精神衛生的にも良くないです。
特に私は心配性なので、誰かにした説明が本当に正しかったかを、何度も確かめながらびくびく仕事やっていた時期もありました。マスコミに対して説明を求められる時なんかは、もう気が気でないってくらいびくびくしてましたね。
慎重な人は公務員に向いていると言われることがありますが、そのような人にとって公務員の業務はストレスが強くかかると思います。
5. 真面目に勉強したところで給料が増えるわけではない
真面目で責任感が強い人ほど、異動の度にしっかり必要な知識を調べて、一日でも早くあらゆる人の対応ができるようになろうとします。
私も、なるべく納得のいく説明をしたいという気持ちが強かったので、異動の度に、なるべく短期間で必要な知識を調べて対応できるように心がけていました。
しかし、だからといって、その人の給料が他の人と比べて増えるわけではありません。地方公務員の給料は基本的に法律に準じる形で決められていますからね。
どうせまた異動になると考えると、むしろ頑張りすぎない方が良いと開き直っている人すらいます。もちろんその場合は、仕事の質は下がりますが、それで給料が下がるわけではありません。
自治体の職員は、真面目で責任感の強い人ほど、損をすることになりかねない仕事というわけです。
頻繁に部署異動があることのメリットもある
部署異動のデメリットを多くとり上げたので、メリットについても簡単に紹介しようと思います。
- 仕事があわなくても、すぐに異動になるので、短期間で変われる
- すぐに部署が変わるため、勉強しなくても何とかなる
- 広く浅く多くのことを知りたい人にとっては、頻繁な部署異動は魅力的な仕組み
部署によってやる業務が全然違うため、自治体職員はプロフェッショナルではなくゼネラリストと言えます。
決裁が多い部署もあれば、全くない部署もあるし、法律をバリバリ運用する部署もあれば、全く法律を使わない部署もあります。
仮に今の部署の仕事があわなくても、部署異動で仕事も変わるので、異動を繰り返すうちに自分にあった仕事を見つけていくことができます。
また、部署によって仕事が全然違うということは、結局、異動の度に必要な知識やスキルが変わるため、ある意味勉強しなくても何とかなるというのはメリットです。
また、一生を通して、いろんなフィールドで仕事がしたい人にとっても、幅広い分野を扱う地方自治体の仕事は魅力的な仕事と言えるでしょう。
【個人的に思うこと】自分がゼネラリストorスペシャリストかの見極めが重要!
市役所や県庁といった地方自治体への就職を考えている方、今、実際に自治体で働いている方に「はい」か「いいえ」で答えてもらいたい問いがあります。
それは、「自分は、何かで一つの事を極めたいという願望があるかどうか?」という問いです。
私は県庁職員時代、「自分の強み」が分からないという事実に絶望を覚えた時がありました。
県庁で仕事をしていると、本当に多くの人と連携して仕事をしますが、県職員の自分はいつも調整役で、いつもプロフェッショナルの人に調査を依頼したり、専門的な知見をもらったりしていました。
自分はいつもお願いしてばかりで、自分には何もできない。県職員の強みっていったい…。
地方自治体の仕事は何かを突き詰めたり、極めたりするプロフェッショナルの仕事ではありません。それをしっかり踏まえた上で、再度、就職先や転職先を考えると、別の選択肢もあるのではないでしょうか?
もちろん、地方自治体の仕事はとても価値のある仕事です。
最近は安定や世間体が良いという理由で入って、ギャップに苦しめられる若い職員が多いので、少し釘をさす形で、本記事を終えます。
ご意見をお聞かせください