なぜ地方公務員から民間企業への転職が難しいと言われるのか?
地方公務員から民間企業へ転職したいけど難しそう…
確かに、地方公務員から民間企業への転職は難しいと言われています。しかし、多くの人が地方公務員から様々な職種への転職を成功させているのも事実です(私もその一人です)。
今あなたが地方公務員で民間企業への転職を考えているなら、地方公務員から民間企業への転職が難しいと言われている理由を知ることが重要です。
本記事では、実際に地方公務員から転職した私の経験をもとにして、地方公務員から民間企業への転職が難しい理由について説明します。
地方公務員から民間企業への転職は必ず未経験転職だから難しい
地方公務員からの転職が難しい理由で代表的なものに、民間企業で即戦力となる業務経験を積んでいないからというものがあります。未経験転職だから難しいということですね。
しかし、これは地方公務員に限った話ではありません。民間企業からの転職でも、別の業界や職種に転職する未経験転職の場合は同じことが言えます。
要は地方公務員も一つの業界であり、民間企業という枠の中に入っていないだけです。
その意味では、みんな同じ未経験転職という土俵の上で転職するわけなので、「地方公務員だから転職が難しい」というより「未経験転職だから難しい」が正しいです。
未経験転職の難易度を決めるもの
未経験転職の難易度を決めるものは、主に次の項目になります。
- 年齢
- 希望する業種
- 求める労働条件
❶年齢
能力値が全く同じ人材が2人いる場合、当然、若い人の方が転職する上で有利です。
なぜなら、若い方が仕事に対する柔軟性があり、その業界や職種で必要な能力が身につきやすいという風に評価してもらえるからです。
一方で、年齢を重ねてからの転職は、若い人に比べると企業の採用担当者が上のような評価をするのが難しく、転職先の企業にとって即戦力となる知識や経験が求められます。
よって未経験転職の場合は、30歳くらいを越えてくると、転職で相当不利になるでしょう。
これは、地方公務員からの転職であっても民間企業からの転職であっても同じです。
➋希望する業種
未経験転職の場合でも、似通っているような仕事への転職であれば、その分転職の難易度は下がるため、地方公務員の実務と似通っている業種の場合は、比較的有利に転職活動を進めることができると思います。
ただし、地方公務員と民間企業の働き方は根本的に違うため、「似通っているような仕事」というくくりで転職先を探そうとすると、転職先の選択肢が大幅に減ってしまいます。転職が難しくなるからといって希望を妥協しても後々後悔するだけです。
未経験転職を成功させている人はたくさんいますので、難しいといっても、あまり深刻にとらえる必要はないでしょう。
➌求める労働条件
転職をする際は、仕事の内容だけではなく、年収などの労働条件も考えますよね。希望する労働条件によって転職の難易度は変わってきます。
- 年収(初任給)
- 福利厚生、諸手当
- 月の平均残業時間、年間休日
- 引越しの伴う転勤の有無
年収(初任給)
若い時の公務員の給料は本当に安いです。しかも、法令によって給与体系が決まってしまっているため、仕事ぶりなど個人の能力によって給料が上がるということはほとんどないと思って良いでしょう。
そのため、年収について言えば、20代くらいの間に「今よりも高い水準の給料」という基準で転職先を探すのであれば、選択肢が多く転職の難易度はそこまで高くならないでしょう。
一般的に公務員の平均年収が民間平均に追いつくのが40歳前後と言われていますので、未経験ということを踏まえれば、30代を越えてくると、転職前よりも高い年収で雇ってもらうのは難しくなります。
福利厚生、諸手当
福利厚生や諸手当について、公務員よりも良い条件を求める場合、規模が大きい大企業などを選ぶ必要があります。
中小企業やベンチャー企業の福利厚生は、公務員よりも良くなるケースは本当に少ないと思います。
よって、福利厚生を改善したい場合、規模が大きい会社への転職は選択肢が多く難易度は低くなります。
逆に、中小企業やベンチャーへの転職の場合は、選択肢が少なく、難易度は高くなります。
月の平均残業時間、年間休日
月の平均残業時間、年間休日については業種や職種による部分が大きいです。
地方公務員は、他の業種に比べて残業は多い方だと思います。また、部署にもよりますが休日出勤もかなりあるため、民間企業で地方公務員よりも残業・休日出勤が少ないところはたくさんあります。
よって、今よりも残業時間や年間休日を少しでも改善できればいいという基準で転職先を探すのであれば、選択肢は多く転職の難易度はそこまで高くはならないでしょう。
転勤の有無
転勤の有無について言えば、地方公務員は引越しを伴う転勤は基本ありません。
一方、民間企業の場合は様々で、基本的に企業規模が大きくなるほど、転勤がある企業は増えてきます。
企業規模が大きいほど、労働環境は整備されており、好待遇になる傾向が強いため、転勤の無い企業に転職したい場合は、その他の待遇が悪くなってしまうケースの方が多いです。
よって、転勤の無い企業に転職する場合、他の待遇をそこまで気にしないのであれば、転職の難易度はそこまで高くなりませんが、他の待遇も気にするのであれば、選択肢が減ってしまい、転職難易度は一気に上がってしまうでしょう。
地方公務員から転職しやすいのはどんな職種(わたしの経験から)
繰り返しになりますが、地方公務員は利益を追求する組織ではないため、民間企業と働き方が全く違います。
必ずしも活かせる能力がないというわけではありませんが、「活かせる実務経験は何か?」という軸のみで転職先を探してしまうと、選択肢が大幅に減ってしまうことになります。
地方公務員からの転職の際には、それ以外の様々な視点で転職先を探すことが重要なカギとなるでしょう。
以下は、わたそが実際に転職活動をした時に、書類選考から面接までの選好フローで、比較的内定までたどり着きやすかった職種を紹介します。
※紹介するもの以外でも、内定はいくつかもらっていたので、これじゃないと無理ということではありません。
営業職
まず、最初に紹介したいのが営業職への転職です。
地方公務員から営業職へは比較的転職しやすいと言われています。
地方公務員として働いていると、一般市民、団体・企業、専門家、マスコミ、議員等、多くの人と連携して働くうちに、幅広いコミュニケーション能力が身につきます。
このコミュニケーション能力は、営業職でも重宝し、特に、一般県民に分かりやすく説明する能力は営業の仕事に直結する力です。
また、営業職の場合は、その会社の製品やサービスについて熟知する必要はありますが、結局のところそのような知識は入社後でないと取り入れることができないという点で、他の入社希望者と同じ土俵に立った上で選考にエントリーすることができるわけです。
営業職ではないですが、実際にわたしも民間企業に転職してみて、やはり地方公務員は本当に高いコミュニケーション能力が必要だったと改めて感じたくらいです。
事務職
地方公務員の場合、ワード・エクセル・パワーポイントは基本どの部署でも使います。公文書や議会答弁を作成したりもするため、体裁や言い回しにも厳しい傾向が強いです。
よって事務職で必要な書類作成スキルが身についているため、その点においては企業の採用担当から一定の評価を得ることができるでしょう。
ただし、民間企業の事務職というと、総務、人事、経理、企画などが当てはまるかと思いますが、どこに配属になっても、書類作成以外の能力も同時に求めれられ、地方公務員の経験だけでは不十分です。
例えば、経理は簿記の資格を持っていた方が転職に有利なりますし、経理部が部署として成立しているような規模の大きい企業では、会計基準などの専門的な知識が必要になります。
また、総務で契約書を作成する場合でも、業種によって扱う法令も違うため、その法令を熟知する必要もあります。
要約すると、地方公務員と民間企業の事務職の仕事は通じるところもありますが、他の転職者に比べてアドバンテージがあるというわけではないため、比較的転職がしやすいという程度にとどまると言えるでしょう。
ITエンジニア
ITエンジニアへの転職は、地方公務員の経験が役に立つからといわけではなく、そもそもIT人材が不足しており、売り手市場の傾向が強いため、比較的転職がしやすい職種として紹介しました。
地方公務員の転職理由の代表的なものに、「つぶしがきく能力がつかない」といったものがあります。
ITエンジニアとして働くことで、現代ではあらゆるところで利用されているシステムやIT製品の開発に必要な知識の取得や業務経験を積むことができます。
つぶしがきく能力を身につけたいなら、転職先の一つの選択肢として持っておくのも良いでしょう。
若い地方公務員は実は転職がしやすい!
わたしの経験上、実は20代の若い地方公務員は転職がしやすいと思っています。
確かに、地方公務員と民間企業の働き方は異なる部分が大きく、即戦力になるかどうかという観点からは評価がもらえないことの方が多いでしょう。
しかし、わたしは転職活動を通して多くの企業の面接官とお話をしましたが、選考を通過した企業の面接官ほど、地方公務員のまじめさや勉強能力の高さを評価している傾向が強かったように思います。
地方公務員になるためには、民間企業と違い公務員試験に合格する必要がありますが、その実績は、公務員の人が想像している以上に高く評価され、勤勉さをアピールする指標としては絶大な力を持っているわけです。
感覚的には、特に大企業の面接官が公務員であることを評価してくれる傾向が強かったよう思います。
もちろん、そもそも公務員試験を知らない面接官もいましたので、必ずしも地方公務員であることが評価されるという保証はありませんが、公務員試験を合格したという実績は、転職活動においても武器になるということは覚えておくと良いでしょう。
周りの声やイメージに惑わされない転職を
地方公務員から民間企業への転職は難しいと言われる理由は、必ず未経験転職になるからであるということを説明しました。
一方で、20代の若い年齢の地方公務員は、むしろ地方公務員というだけで評価してくれる企業もあるということをお伝えしました。
未経験転職は、仕事の実用的なスキル以外で自分をアピールしないといけないので、転職のハードルが高くなりますが、地方公務員の場合、公務員試験に合格した実績も一つの武器になります。
地方公務員だから転職がしにくいという世間の声を鵜呑みにして転職をためらっていると、いつまでたっても転職に踏み切れません。
そして、未経験転職の場合、30代になってくると、自分の望み通りの転職が本当に難しくなってきます。
わたしも地方公務員をやめるときは反対の声も多く、転職すると後悔しないか心配になった時期もありましたが、実際に転職してみて後悔はしていません。地方公務員の世間一般的なイメージにはギャップがあると確信しています。
是非、少しでも迷っているなら転職活動だけでもしてみるところから始めてみてください!
ご意見をお聞かせください